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日本クレーン協会規格「クレーン機能を備えた油圧ショベルのクレーン部分に係る定期自主検査実施要領」のあらまし
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1.はじめに
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 (社)日本クレーン協会は,クレーン等による労働災害の防止と運搬管理の向上をめざして,クレーン等に関する各種の技術的調査・研究や,知識の普及,検査検定及び技術的指導等の事業を推進しております。
 その活動の一つとして,クレーン等の安全に係わる日本クレーン協会規格(JCAS:Japan Crane Association Standard)を制定し,公表することによって広く会員の方々の参考となる情報を発信しております。
 今回は,以下に「クレーン機能を備えた油圧ショベルのクレーン部分に係る定期自主検査実施要領」(JCAS 2206-2004)の概要についてご紹介します。


  日本クレーン協会規格 JCAS 2206-2004平成16年 4月制定
クレーン機能を備えた油圧ショベルのクレーン部分に係る定期自主検査実施要領
Executive points of periodical self inspection for crane part of hydraulic shovel with crane function


2.JCA規格制定の背景
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 平成12.2.28付け労働省労働基準局安全衛生部安全課長事務連絡「クレーン機能を備えた車両系建設機械の取扱いについて」により,クレーン機能を備えた車両系建設機械は,移動式クレーンに該当するものであり,労働安全衛生関係法令の車両系建設機械に係る規定及び移動式クレーンに係る規定の両方が適用されるものであることが示されており,定期自主検査についても,車両系建設機械部分及びクレーン機能部分の両方についてそれぞれ実施しなければならない。
 移動式クレーンの定期自主検査を行う場合の検査項目,検査方法及び判定基準は「移動式クレーンの定期自主検査指針」(昭56.12.28自主検査指針公示第1号)として公表されているが,この指針では油圧ショベル固有の部分については説明がない。
 本規格は,つり上げ荷重が3トン未満のクレーン機能を備えた油圧ショベルのクレーン部分の定期自主検査を行う場合の検査項目,検査方法及び判定基準を定めたものであり,以下にその概要を紹介する。


3.検査項目,検査方法及び判定基準
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2.1クレーンモード切替スイッチ

検査項目 検査方法 判定基準
クレーンモード
切替スイッチ
(1)エンジン
回転速度
 モード切替スイッチをクレーン側に切替えて,エンジンの回転速度を調べる。  当該機械の製造者による規定回転速度の範囲であること。

[解説]

 エンジンを暖気運転した後,モード切替スイッチをクレーン側に切替えて,クレーンモードにおけるエンジンの最高回転速度を計測する。

 

検査項目 検査方法 判定基準
クレーンモード
切替スイッチ
(2)旋回速度  モード切替スイッチをクレーン側に切替えて旋回速度を調べる。  当該機械の製造者による規定旋回速度の範囲であること。

[解説]

 モード切替スイッチをクレーン側に切替え,エンジン回転速度をクレーンモードにおける最高回転速度とし,無負荷で旋回レバーをストロークエンドまで入れた状態で旋回させ,そのときの旋回速度をストップウォッチ等で計測する。旋回速度は,右旋回及び左旋回についてそれぞれ3回転程度の旋回に要する時間を計測して求める。

 

検査項目 検査方法 判定基準
クレーンモード
切替スイッチ
(3)外部表示灯  モード切替スイッチの切替えに連動して外部表示灯が点灯することを調べる。  モード切替スイッチの切替えに連動して点灯すること。
   

[解説]

 モード切替えスイッチをクレーン側に切替えたとき,外部表示灯が点灯していることが明確に判別でき,表示色は橙色であることを確認する。

 

2.2キャブ又はキャノピー

検査項目 検査方法 判定基準
キャブ又はキャノピー (1)水準器  取付け状態,損傷及び表示部の汚れの有無を調べる。  取付け状態が良好であり,損傷又は表示部の汚れがないこと。
   

[解説]

 水準器が機体に水平に固定して取付けられており,運転席より気泡の動きが明確に視認できることを確認する。

 

検査項目 検査方法 判定基準
キャブ又はキャノピー (2)表示板  運転者の見やすい位置に,定格荷重を表示する銘板が損傷無く取付けられているかどうかを調べる。  定格荷重を表示する銘板が損傷無く取付けられていること。

[解説]

 定格荷重の表示方法には,運転者の見やすい位置に銘板を取付ける方法,シール状のものを貼付する方法等がある。
 フック等のつり具の質量が明確に表示されている場合には,定格荷重に代えて定格総荷重が表示されていてもよい。

 

検査項目 検査方法 判定基準
キャブ又はキャノピー (3)レバー  起伏装置又は旋回装置にあっては,運転者がレバーから手を離した場合に,自動的にレバーが移動式クレーンの作動を停止させる位置に戻り,かつ移動式クレーンの作動を停止させる構造であるかどうかを調べる。  運転者がレバーから手を離した場合に,自動的にレバーが移動式クレーンの作動を停止させる位置に戻り,かつ移動式クレーンの作動を停止させる構造であること。

[解説]

 作動速度が速い場合には,レバーから手を離したときにショックを伴って停止することがあるため,この検査は,無負荷状態でエンジン回転速度を低速にして行うこと。

 

 

 

2.3上部旋回体

検査項目 検査方法 判定基準
上部旋回体 表示板

@ 製造者名,製造年月及びつり上げ荷重に係る銘板が損傷無く取付けいるかどうかを調べる。

A 玉掛け者が定格荷重を常時知ることができるよう,表示その他の措置が講じてあるかどうかを調べる。

@ 各銘板が損傷無く取付けられてられていること。

A 玉掛け者が定格荷重を常時知ることができるよう,表示板が取付けられていること。


[解説]

 Aは,ブーム又は運転席付近の玉掛け者から見える位置に「使用しうる最大作業半径における定格荷重」が表示されていることを確認する。

 

 


2.4フロントアタッチメント

検査項目 検査方法 判定基準
フロントアタッチメント フロントアタッチメント  クレーン機能部分の製造者が指定した作業機及びアタッチメントが装着されているかどうかを調べる。  クレーン機能部分の製造者が指定した作業機及びアタッチメントが装着されていること。
   

[解説]

 当該移動式クレーンの定格荷重を決めているバケットの大きさ,カップラの有無等の仕様に過不足がないことを調べる。又,製造者が指定した長さのブーム及びアームが装着されていることは,移動式クレーン作業における最大作業半径を計測して,その値が定格荷重表の最大作業半径の値に合致していることにより確認する。

 



2.5油圧装置

検査項目 検査方法 判定基準
油圧装置 逆止め弁

@ 損傷及び油漏れの有無を調べる。

A 土砂,石等の付着がないかどうかを調べる。

B 取付けボルトの緩み及び脱落の有無を調べる。

@ 損傷又は油漏れがないこと。

A 土砂,石等の付着がないこと。

B 緩み又は脱落がないこと。


[解説]

 逆止め弁本体,コネクタ,配管,ホースなどの接続部からの油漏れ,損傷を目視にて点検する。「逆止め弁」とは,落下防止弁等を言う。

 

 

 

2.6作業装置

検査項目 検査方法 判定基準
作業装置 フックブロック

@ フックの摩耗及び変形の有無を調べる。

@ フックの磨耗又は変形量が規定値以内であること。

   

[解説]

 フックの摩耗量 aは,製造者の規定値以内であること(規定値の無いものについては, aは bの5%以内であること)を調べる。
 フックの開きについては,フックの口の内寸法 dを計測し,製造者の規定値以内であることを調べる。ポンチマークが打刻されている場合は,ポンチマーク間の距離 cを計測し,フックの開きが原寸法の5%以内であることを調べる。


検査項目 検査方法 判定基準
作業装置 フックブロック

A フックブロックのき裂,損傷の有無を調べる。

A き裂又は損傷がないこと。

[解説]

 き裂又は損傷の有無を目視,触診,打診等で調べる。

 

 

検査項目 検査方法 判定基準
作業装置 フックブロック

B 軸受部のガタ及び回転の円滑性を調べる。

B 片手で滑らかに左右1回転を回すことができること。又,上下及び左右の振れ量が当該機械の製造者による規定値以内であること。

   

[解説]

 作業姿勢でフックを片手で1回転させ,両方向へスムーズに回転するかどうかを調べる。回転に引っかかりがあったり,ある位置で回転が硬くなる場合は内部摩耗,又は破損等が考えられる。
 手でフックの下端を支え,上下左右に動かし,上下及び左右方向の振れを計測する。振れが当該機械の製造者が示す規定値以上ある場合には,フックナットの緩み,軸受部の摩耗等が考えられる。
異常があるときは,製造者へ連絡すること。

 

検査項目 検査方法 判定基準
作業装置 フックブロック

C ピン及びキープレートのき裂,摩耗及び損傷並びに取付けボルトの緩み及び脱落の有無を調べる。

C ピン又はキープレートにき裂,顕著な摩耗又は損傷がないこと。又,取付けボルトの緩み又は脱落がないこと。

   

[解説]

 ピンにガタが無く,かつフックがピンを中心に片手で揺動することを調べる。片手で揺動しない場合には,ピンの変形,錆付き,腐食,砂の混入等が考えられる。
 又,フックのハウジングを持って上下に動かして,移動量が製造者による規定値以内であること及びピンを長手方向に動かして移動量が製造者による規定値以内であることを調べる。規定値を超えている場合は,キープレート又はピンの摩耗が考えられる。
 異状があるときは,製造者へ連絡すること。



検査項目 検査方法 判定基準
作業装置 フックブロック

D フック止めねじの緩み及び脱落を調べる。

D 緩み又は脱落がないこと。

   

[解説]

 フックねじ結合部の止めねじ(六角穴付き止めねじが多い。)が緩んでいないかどうかを確認する。
 この止めねじはかしめてあるが,もし緩んでいたり,頭が飛び出していたら製造者へ連絡すること。



検査項目 検査方法 判定基準
作業装置 フックブロック

E ワイヤロープ外れ止め装置の変形及び損傷の有無並びに機能を調べる。

E 変形又は損傷がなく,又,バネ力が十分にあり,正常に作動すること。

   

[解説]

 ワイヤロープ外れ止めが変形したりバネ力が十分でないと玉掛けワイヤロープが外れることがあり非常に危険である。またフックが伸びたりフッワイヤロークの先端部分が摩耗して,口が開いてくると外れ外れ止め止めの引っかかりが浅くなる。



検査項目 検査方法 判定基準
作業装置 フックブロック

F フックブロックの格納状態を調べる。

F 所定の位置に格納できること。

[解説]

 フックブロックが所定位置に格納できない場合には,油圧ショベルとしての作業時にフックブロックの損傷を招く可能性が大になる。




検査項目 検査方法 判定基準
作業装置 フックブロック

G フック回転部の給油脂状態を調べる。

G 給油脂が十分で,適切に行われていること。

   

[解説]

 グリースニップルのつぶれ,変形等がなく正常にグリースアップできることを確認する。
 フック回転部への給油脂は,フック付け根のオイルシールからグリースが溢れ出るまで行うこと。グリースアップを怠ると内部部品の腐食,摩耗が進み回転部の寿命が極端に短くなる。

 

 


2.7安全装置(過負荷制限装置)

検査項目 検査方法 判定基準
安全装置
(過負荷制限装置)
(1)角度検出器
(ブーム,アーム)

@ 損傷の有無を調べる。

A レバー式のものにあっては,レバーの変形の有無及び取付け状態を調べる。

B 被覆の損傷,接続部の緩み及び腐食の有無を調べる。

@ 損傷がないこと。

A レバーに変形がないこと。レバーの取付け部が半固定式の場合は,その遊びの量が当該機械の製造者による規定値以内であること。

B 損傷,緩み又は腐食がないこと。

   

[解説]

1 通常,ブーム角度検出器は,本体との接続部にあり,アーム角度検出器は,ブームとの接合部にある。レバーの折損・曲り,取付けボルトの脱落,配線の緩み,腐食等を目視点検する。

2 図13のようなレバー取付け部が半固定式の場合は,取付けボルトとレバーの取付寸法 a,b及び取付けボルトとレバーとのスキマ cが確保されているかどうかを調べる。

 


検査項目 検査方法 判定基準
安全装置
(荷重制限装置)
(2)荷重検出器

@ 損傷の有無を調べる。

A 油漏れの有無を調べる。

B 配線の被覆の損傷,接続部の緩み及 び腐食の有無を調べる。

@ 損傷がないこと。

A 油漏れがないこと。

B 損傷,緩み又は腐食がないこと。

[解説]

 ブームシリンダーの落下防止弁にボトム側圧力検出器,ブームシリンダー配管にロッド側圧力検出器が装備されている。油漏れ,損傷及び配線の損傷,緩み又は腐食について目視にて検査する。

 


検査項目 検査方法 判定基準
安全装置
(荷重制限装置)
(3)荷重計

@ モード切替スイッチに連動して荷重計がONになることを調べる。

A 荷重計の損傷の有無及び表示板の視認性を調べる。

B 荷重計を作業半径表示にし,表示値 の異常の有無を調べる。

C 配線の被覆の損傷,接続部の緩み及び腐食の有無を調べる。

@ モード切替スイッチに連動して荷重計がONになること。

A 損傷がなく,表示板の視認性が良いこと。

B 作業半径の表示値に異常がないこと。

C 損傷,緩み又は腐食がないこと。

[解説]

 無負荷状態においてブーム及びアームを全作業半径の範囲について動かし,

・荷重計の定格荷重表示値が明確に視認できること及び明らかな異常値を示すことがないことを調べる。

・作業半径の表示値が最大作業半径の値と最小作業半径の値の範囲の間で滑らかに変化することを調べる。

 この検査は,作業半径最小から最大及び最大から最小の双方向について行なう。




2.8荷重試験

検査項目 検査方法 判定基準
荷重試験 (1)起伏能力  定格荷重に相当する質量の荷をつり,ブーム及びアームを起伏させて,起伏能力の有無を調べる。  起伏能力があること。
(2)起伏ブレーキ能力  定格荷重に相当する質量の荷をつり,起伏ブレーキ能力の有無を調べる。  ブレーキ能力があること。


[解説]

1 定格荷重に相当する質量の荷をつってブーム及びアームを作動させたときの操作性の異常又は異音の有無を調べる。
 荷重試験にあたっては,定格荷重以上の過負荷にしてはならない。起伏能力の試験においては,作業半径を短くする動作の試験をした後,その位置から作業半径を伸ばす動作の試験をすること。

2 ブーム及びアームの起伏ブレーキは,通常油圧制御によるブレーキである。ブレーキの減速性及び保持機能について能力を調べる。保持機能については,定格荷重に相当する質量の荷をつって,操作レバーを中立位置にして1分間保持する間につり荷が降下しないことを目視で検査する。


 

検査項目 検査方法 判定基準
荷重試験 (3)旋回能力  定格荷重に相当する質量の荷をつって旋回を行い,旋回能力の有無を調べる。  旋回能力があること。又,旋回時に異音又は異常振動がないこと。
(4)旋回ブレーキ能力  定格荷重に相当する質量の荷をつったときの旋回ブレーキ能力の有無を調べる。  ブレーキ能力があること。


[解説]

 定格荷重に相当する質量の荷をつって機械を旋回させたときの操作性の異常又は異音の有無を調べる。確認の操作は,右旋回及び左旋回を各2回転程度行うこと。
 旋回ブレーキは,通常油圧制御によるブレーキである。ブレーキの減速性及び保持機能について能力を調べる。

 

 

検査項目 検査方法 判定基準
荷重試験 (5)荷重計の警報精度  警報が適切に作動するかどうかを調べる。  警報が適切に作動すること。


[解説]

1 定格荷重に相当する質量の荷を,作業半径を縮めた状態でつり上げた後,作業半径を伸ばす動作を行い,つり荷による荷重が定格荷重を超える前に,警報を発することを以下の手順で確認する。

(1) 試験に用いる荷重としてつり上げ荷重の50%以上に相当する質量の荷を用意する(図
15のW1)。

(2) 試験に用いる荷重W1が定格荷重となる作業半径をあらかじめ定格荷重曲線により求める(図15のR3)。

(3) 機体を水平堅土上に設置し,(2)で求めた作業半径より小さな作業半径で荷重W1をつり上げる。

(4) 次の点に注意しながら作業半径を徐々にのばしていき,警報が発生したときの作業半径(図15のR2)を巻き尺などで計測する。このとき,以下の点に注意すること。
・操作は微速で行う。
・荷の高さは地切り状態(地上10 cmから20 cm程度)で行う。
・機体後端が浮き上がらないことを確認しながら行う。
・定格荷重曲線より求めた作業半径内で警報を発しない場合があることに注意する。

(5) 作業半径R2に対応する定格荷重を定格荷重表又は定格荷重曲線から求める(図15の W2)。

(6) 警報の作動精度は以下のように求める。
 
@ 定格荷重が500kg以上の場合
(5)で求めた定格荷重をW2とすると,

  たとえば,実荷重が2.0トンで,警報が発生した作業半径が3.0m,この作業半径に相当する定格荷重を定格荷重表又は定格荷重曲線より求めると,2.2トンであったとする

したがって警報の作動精度は100%−9.1%=90.9%となる。

 A 定格荷重が500kg未満の場合

  作動精度=試験荷重― W2

  たとえば,実荷重が400kgで,警報が発生した作業半径が5.0m,この作業半径に相当する定格荷重を定格荷重表又は定格荷重曲線より求めると,450kgであったとすると,

  作動精度=400kg−450kg=−50kg

  したがって警報の作動精度はマイナス50kgとなる。

(7) 警報の作動精度は,定格荷重が500kg以上の範囲では,定格荷重に対して85%以上で,かつ,100%未満であること,定格荷重が500kg未満の範囲では,その最大誤差がマイナス75kgであること。

(8)試験は2回以上行う。

2 警報音は,運転位置において十分な大きさであることを確認する。警報音を計器で計測する場合には,運転位置において75dB(A)以上であること。

3 オフセットブーム,2ピースブーム,スライドアーム等の特殊仕様車は,製造者の指定する固定処置を講じて試験を行うこと。


4.おわりに
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 当協会では,本JCA規格の内容に加え,クレーン機能を備えた油圧ショベルに関する知識,事故事例,危険予知活動シート,関係法令の概要等をまとめた「クレーン機能を備えた油圧ショベルのクレーン部分に係る定期自主検査実施要領の解説」(B5判,税込価格1,000円)を発行しているので,こちらも活用していただきたい。
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